8/7(火)エフレムさんの博士論文の発表会が行われました!
8/7(火)にエチオピア出身のエフレムさんの博士論文発表会が行われました。
タイトルは"Heritage Conservation Challenges on the Rock-Hewn Churches of Tigray, Ethiopia"(エチオピア・ティグライ岩窟教会群における遺産保存活動)です。
この論文では文献調査、観察、インタビューを主な研究方法として、岩窟教会群保存のための地域社会の役割、行政の関与、聖職者の意見と保存活動について書かれています。
以下要約:
近年の建築遺産の保存については、物的な介入から包括的な手法へと焦点が移っており、地域の役割や活動への参加は現代の遺産保存活動において必要不可欠となっている。
今までのエチオピア・ティグライの遺産保存活動では、地域社会の積極的な参加や地元の職人の真の気遣いがあった一方で、国や地方の行政機関の怠慢や経済的問題、人員不足が明らかになっていた。しかし1991年の政権交代の後、社会経済的な情勢が原動力となって教会と地域社会及び州の関係が変わり、保存活動は地域社会の責任から政府の役割へと変わった。その結果地域社会の役割がなくなり、伝統的な保存手法と技術が使われなくなってしまった。現在の保存活動における伝統的な技術の役割は取るに足らないほどで、効果に結びついていない。
青森県むつ市のケーススタディでは、仏教寺院の保存の仕組みにおいて、法機構、訓練施設、檀家による地域社会の関与が利点であり、エチオピアの文化資産の保存においてはこのような仕組みが必要であると導かれる。
リビングヘリテージの保存において地域社会を中心に据えることは、地元の知識や伝統的な保存技術を活用することになり、持続可能なものとなる。